前なら待っててくれたのに…。
手だって繋いでくれてた。
なんでいきなり突き放すようなことするのよ!
スレ違ってるのは知ってるよ。
でも、あからさまにしなくたっていいじゃん。
「ねー郁理?」
「ん?なに?」
「あたしのこと避けてるでしょ?」
「別に避けてねぇよ」
「…そっ」
あたしは郁理の少し後ろを歩く。
こんなに会話とかないなら、一緒に帰ってる意味ない……。
落ち込みかけてたあたしに郁理が歩幅を合わせてきて、隣に並ぶ。
さりげなく手を握られる。
「…彩葉の手あったかい」
「郁理の手冷たい。この時期に風邪引いたらダメだよ」
「今週受験なんだから彩葉こそ引いたらダメじゃん」
「知ってますー」
「あっそーですか」
久しぶりに繋がれた手は冷たい。
でも、この大きな手に安心する。