「……こっちを見ないでくれない?食べられないのだけど」
私の言葉にハッとしたような顔をして真っ赤になり、執事はすぐに頭を下げた。
「も、申し訳ございません。無礼で重々承知なのですが、その……。お味は如何でしょうか?」
「……まぁまぁいいわ」
「そうでしたか」
ショボンとした執事を見て、うんざりする。
もっと堂々としていればいいのに。そう言おうとして、スプーンを置いた。
「……ご馳走様」
「えっ、もう宜しいのですか?」
「ええ。……ああ、それとね、私はこのあと今日はずっと部屋にいるから、一歩も私の部屋の前に立ち寄らないで。少しでも足音を立てたら、全て台無しになってしまうの。お茶も食べ物も要らないわ。いいわね?」
「えっ。で、ですが」
「分かったわね?」
「……はい」
遠くで何か言っているのが聞こえたが、聞こえないふりをした。