いつもの時間に来る声で、目が覚めた。
「お嬢様、おはようございます」
部屋が静かなせいか、ミーンミーンとセミの鳴き声がやけに響く。
あまりの暑さに、服を脱いでしまいたくらいだ。
起き上がって「あぁ、おはよう」と、言おうとしてやめた。
「あなた、誰」
そう言うと、キョトンとした顔で首を傾げるのが見える。
……大体は見当はつくけれど。
また兄が、勝手に執事をつけたんだろう。
私、田辺蒼羽は一人、別荘に来ていた。
一人で夏休みを過ごしたい、と。
どうやらその願いは叶わず、新しく派遣された執事が私と一緒に来たという訳だ。
新しい執事を見て考えていると、目が合い、微笑みかけられた。