よく晴れた日曜日。
待ち合わせの場所は、多くの人で賑わっていた。
駅前の公園。
家族連れで元気に遊ぶ子ども達の姿が見える。
その姿に、律を重ねて自然と頬が緩んだ。

「結、お前今、律を連れてこれば良かったと思っただろ」
「っ…よく分かったね…」

だって楽しそうだ。
たまには他の子ども達とも、普通に遊ばせてやりたい。

「律ったらこの前、友達と遊んだって言って、泥だらけで帰って来たんだよ」
「誰と遊んだんだ?」
「ビト、リズ、ラド…」
「っくっまさかの人狼三兄弟かっ?!」
「…そう…穴堀競争だって…やっぱり普通の人の遊びをさぁ…」
「ったっ確かにっ。
っははっなるほどっそうなるのかっ」
「笑い事じゃないよ…けっこう深刻な問題なんだから」

休みの日は、大抵本部に私も出掛けてしまう。
そうなると、龍泉や黒狼が相手をする事になるのだが、遊びと言っても限られてくる。

「やっぱりこっちの保育園とか?
あ〜でもなぁ〜……」

人の世界から離して育ててきた為、常識にズレが生じている。
もう少し大きくなったら、理解させながら教える気だったのだ。

「そんなの簡単だ」
「何が?」

いきなり名案を思い付いたと言うように、手を叩いた煉夜は、とんでもない事をさらりと言ってくれた。

「お前が早く、子どもを産めば良い」
「っ……ッ」
「ッ何!?」
「っどう言う事!?」

うん?

驚きのあまり声も出せなかったはずなのに、違う所から驚きの声が上がった。

「………」
「っおねぇちゃんっ子ども出来たの!?」
「結姉っ子どもって…っ子どもッ!?」

すごい勢いで二人の弟妹に迫られ、気が遠くなった。

「……煉っ…」
「っくっあっはっはっはッ…」

コイツ…美輝達が来たのに気付いて、わざとだなっ。

「…まだ結婚もしてないから…」
「本当!?
でも、反対じゃないんだよ?
お似合いだと思うし……」
「あれだな。
『おねぇちゃん、取っちゃやだぁっ』ってやつだ」
「「っっっ……っそっ…」」

この二人、よく似てきたなぁ…。

「さて、遊ぶのはこれくらいにして…。
さっさと行くぞ」
「「「……」」」

引っ掻き回した張本人が何を言うのか…。

そして弟妹の案内で、神城家へと向かう事になった。

「おねぇちゃん、何で子どもがどうのって話になったの?」
「あ〜、律の遊び相手をね。
あの子、人と遊んだ事ないんだよ」
「???あっそっかぁ、普通の人間がいないんだぁ」
「そう、遊び相手は、精霊か、人狼族の子か、エルフ族とかかな?
遊びが独特でね……」
「やっぱしアレ?
魔法とか使った遊びとか?」
「うん…隠れんぼとかはね、普通に池の中に隠れたり、天井に張り付いたり、姿隠しの術を使ったり……忍者みたいになるんだよねぇ〜」
「「………」」

気配を読む訓練にはなるのだろうけれど、もう少し軽めにしてほしい。

「あれは、探すの苦労する上に、隠れるのも必死なんだよ」
「お前は、決まって屋根の上だったよな」
「楽だったんだよね。
飛ぶだけだし、見つかるまで昼寝できたし」
「やっぱ、寝てたのかっ。
こっちが必死で岩や壁になってる時にっ」
「うん。
だから、天気の良い日しか参加しなかったんじゃん?」
「……おねぇちゃん…律くんの事、あんまり気にしなくてもいいかもね…」
「……俺もそう思う…」

なぜ?

「まぁ、今の私らが証拠って事だな」

そして煉夜はまた、愉快そうに笑うのだった。