「そんで?
どこに行くんだ?」
「話しませんでしたっけ?」
「話してないだろ。
明日空けてくれって言っただけだ。
珍しい事もあるもんだと思って、一日空けたけどな」
「俺も聞いてない。
友達と遊びにでも行こうと思ってたのに…」

何だか居心地が悪そうだ。
こうして兄弟で行動する事が、今までなかったのだろう。
確かにあまり気が合う兄弟ではないという印象があった。
最近になって雪仁さんが歩み寄ったように感じたが、特に接点のない仲だ。
この兄弟は、全員性格が違う。
長男の刹那さんは、実は昔不良だったらしいが、楽観主義者で、自由な人という印象がある。
次男の晴海さんは、長男を差し置いて、父親の会社を継ぐ次期社長という事もあり、少々お堅い。
三男の雪仁さんは、穏やかな性格で、一番話やすいし、家事全般をこなし、面倒見がいい。
四男の夏樹くんは、一見硬派を気取っているけど、実は細かい事によく気付く、誠実な少年だ。

「おねぇちゃんに会ってほしいんです」
「……結に…?」
「はいっ」
「結って…結姉?」
「そうだよ」
「結姉がお姉ちゃん…?」

わけがわからないと言うような感じで、夏樹は、かなり混乱している。

「夏樹には話てなかったけど、実は結ちゃんは、美輝ちゃんのお姉さんで、お母さんが再婚する前に養女に出ちゃったらしいんだ。
だから、本当だったら、僕らの兄弟だったんだよ?」
「っマジで!?」

何だろう…嬉しそうだ。

「夏樹くん…おねぇちゃんの事知ってるの?」
「っうっあぁ…」

どうしてだろう…何だかムカムカする。

「美輝ちゃん、どうしたんだい?」
「何でもないです…」
「何でもないって顔じゃないぞ?
もしかして嫉妬か?」
「っなっ何言ってんですかっ刹那お兄さんっ。
だいたい何に対して…」
「結だろ?」
「っ……」

確かにそうかもしれない。
妹である私を差し置いて、他人の夏樹くんに『結姉』なんて呼ばせてる。
それがおもしろくない。

「おねぇちゃん…私の事、全然気にしてなかったのに……っ」
「っあんなイイ人が姉貴なのに、何で今まで黙ってたんだよっ」
「ッ私だって、おねぇちゃんがあんな人だって最近知ったんだもんっ。
人のおねぇちゃんっ気安く呼ばないでっ」
「ッなっそんなの気付かなかったお前が悪いんだろうがっ」
「っ…ッ…」

ムカつくっ。
私のおねぇちゃんだもんっ。

「こらこら、ケンカすんな。
今から結に会うんだろ?
そんな顔で会う気か?
結を心配させるような奴らは会わせないぞ?」
「「っう…ごめんなさい…」」
「よし。
それで、どこで会うんだ?」
「あぁ、刹那兄さんなら分かるって…『リリィのお店』…?って言ってたかな」
「あ〜ぁ、リリィさんのとこか…」