「…なんだと」

 オラシオンはキングを掴んだ。

 だが、どこへどう動かしても範囲内であることに変わりはない。

 オラシオンはキングを投げ出すと

「俺の負けだ」

 と小声で言った。

 ルークがニヤッと笑う。

 その微笑みに、オラシオンはムッとした。

「…では、約束通り…「わかってる!」

 オラシオンはルークの言葉を遮り、チェス盤を乗せているSサイズのテーブルを叩いた。

「いつ視察をなさるのか決めておいてください。では」

 そう言って、ルークは立ち上がると重臣が着る白いコートの裾を翻して部屋の出入り口まで歩いて行った。