ルークは何があっても冷静だ。

 そこが嫌いな点であり、彼を気に入っている点でもある。

 オラシオンはルークを睨んだ。

「…オマエが負けたら?」

「視察の件は引き下がります」

 ルークはそう言ってポーンを動かす。

「…いいだろう。その勝負、受けてやる」

「とっくに受けていると思いますが?」

 オラシオンは歯ぎしりをしたが、精神面でも負けるわけにはいかない。なんとか怒鳴りたい衝動は抑えた。

「…チェック」

 ルークが言った。

 オラシオンは驚いてチェス盤を見る。

 よく見ると、オラシオンの白のキングは黒の駒の行動範囲に囲まれていた。