「沙英子のことだけど…」 「うん」 「なつこさんと出会う前まで付き合ってたんだ。だけど突然振られたんだ。好きな人ができたって」 「そう、だったの」 あたしと一緒だった。 あたしも突然秀二に振られた。 きっと悲しかったよね。 ツラかったよね。 「うん。でも沙英子が幸せになるならと思って身を引いたんだ。でも忘れることができなかったんだ。何度か電話しちゃって…。本当情けない。自分で引こうと決めたのに…」 裕也は目を伏せたまま。 表情を読み取ることはできなかった。