「今更、何考えてるんだろうね。」


成美ちゃんの発言にあたしもひどく同感した。
本当に今更、何考えているんだろう。


「千亜!」


教室中に響き渡る声。
その声は確かに聞き覚えのある男の声。
慌てて振り返ると光輝がドアの前に立っていた。
あたしも驚いているけど隣の席の裕太だってビックリしてる。


「お願い、俺まだ千亜のこと好きなんだって!もう一回、付き合って!」


クラスの人が見てるのに何て大胆に告白するんだろう。


「え!千亜、彼氏いたの?!」


隣から避け続けていた裕太の声が聞こえる。


「光輝・・・あたし好きな人がいる。」


そう言って断った。
みんなに見られてたっていい。
裕太はこんな事を言ったぐらいじゃ気づかない。


「それって・・・コイツ?」


指差す先は裕太。


「・・・うん。」


素直に答えた。
クラスのみんなも驚いてた。
でも気にしない。
恥ずかしいけど裕太が好きだから・・・。


「じゃあ、千亜・・・最後に・・・。」


そう言って光輝があたしの頬に軽く唇を触れさせた。


「ちょっと!何するの?!」


バチンと頬を叩いてやった。
光輝は「ずっと好きだから。大好きだから。」そう言って教室を出て行った。
クラスの視線が痛いほどわかる。
でも明るく振舞った。


「あはは、本当ムカツクよね・・・。」


成美ちゃんに笑いながら言うと「千亜ちゃん・・・」と同情するかのように悲しい顔をしていた。


「千亜!」


そんなあたしを見かねたのか裕太が手を掴みあたしを教室から引っ張り出した。
向かった先は使われていない理科室。
もうすぐ最初の授業が始まるのにお構いなしの様子の裕太。


「千亜、元カレとかいたんや・・・。」


ボソッと呟く裕太に「そうだよ」と言ってみせた。
まだ普通に話せるってわけじゃない。


「なんかムカツクねん。」

「は?あたしが・・・?」


誰もいない理科室で響き渡る声。


「ちゃう、元カレや。なんかムカツクねん。千亜とられた感じでモヤモヤすんねん」


それって・・・それって・・・期待してもいいの、裕太?