音匣マリア

結局、次の日の朝は早く起きてマユさんを追い出し(言葉は悪いけど)、朝食もとらずに蓮の実家に避難した。


朝早くに来た私達を、蓮のお母さんは嫌な顔一つせず迎えてくれた。


伊織さんも蓮のお父さんももう出勤した後で、お母さんも今から準備をして仕事に行くと聞いたら、とても申し訳なくなってしまう。



蓮のお母さんが仕事に出掛けた後は、蓮の部屋で旅行雑誌やパソコンで紅葉狩りと温泉が楽しめる場所を探している。


京都辺りには憧れるけど、一泊で京都なんて無理だし。

そんな感じでお昼頃まで二人で旅行先を話し合っていると、蓮の仕事用の携帯が鳴った。


携帯を見て相手を確認すると、蓮は急いで電話を繋ぐ。


あの慌て方だと瀬名さんかな?


「はい、もしもし。はい、入手できたんですか?早いですね。……今夜ですか?まあ、大丈夫ですけど……。分かりました。菜月も連れていきます。じゃあ、19時頃瀬名さんの店に行きますんで」


やっぱり瀬名さんだったんだ。


宜しくお願いします、と言って蓮は電話を置いた。


「うちの店の客の誕生年に作られたワインを探してくれるよう瀬名さんに頼んでたんだけど、それが手に入ったみたいなんだ。今夜取りに来いって言うから、一緒に行くか?」

「行くか?って、私も連れてくって瀬名さんには言ってたじゃん」

「嫌とは言わないだろ?」


そりゃ嫌だなんて言わないけどね。瀬名さんのお店にも夏のお盆休み以来行ってないし。


「……それまでさ、ここで昨日の続き……しよっか?」

「まだ旅行先を決めてないよ!」

「そん時になったら決めよう?」


そう言いながらも蓮は、服の上から私の体を良いようにまさぐり始める。


こうなったら止められないと知ってて蓮に流されてる私も、相当重症かも。


前は彼氏とエッチなんてしなくても良いなんて考えてたのに、蓮が相手だといつもそれに応えたくなる。


……なんでこんなに蓮とは繋がっていたいんだろうな……?