「結構混んでるな」

「ん。この観覧車はカップルに人気あるからね」


多分みんなあのジンクスを試したくて乗るんだろうけど。


観覧車の乗り場は、春の暖かい夜風に吹かれながら手を絡め合うカップルで長い列ができている。



「大分待たなきゃいけないけど、蓮さんは嫌じゃない?」


もしかしたら待つのに飽きるんじゃないかと思って、蓮さんに気を使って尋ねてみた。


「いや?菜月が乗りたいんならいくらでも待てるけど」


ふ、と笑って蓮さんが私の髪を手で鋤いた。


「葉っぱが髪についてた」

「うっそ。気がつかなかった。ありがとう……」


平静を装ってお礼を言ったけど、内心はすごくドキドキしてる。


蓮さんの綺麗な手が好き。

カクテルを作る時の繊細な指使いや、ダーツを投げる時に伸びるしなやかな指が。



その指が私の髪に触れただけで、舞い上がりそうになるなんてね。


多分、他の女の子達は蓮さんの容姿に憧れるんだろうけど、私は蓮さんの仕事に見惚れてるみたいだ。


もう自分で認めよう。


私も蓮さんが好きなんだって。


恋すると、こんなに貪欲になってまで相手を求めたくなるのかな。やっぱこれって恋なんだよね。


観覧車のジンクスが、本当になればいいのにな。





「足元に注意してお乗り下さい。ドアを閉めます」


30分ほども待たされて、ようやく白いゴンドラに乗れた。


実は白いゴンドラは一番人気。

なぜならこの観覧車の白いゴンドラに乗って頂上まで昇るのが、ジンクスの絶対条件。

そして必ず満月の夜にそれに乗らなきゃいけない。


……そして、頂上まで来たら……。


「菜月?ボーッとしてるけど、どうした?」


ゆっくり昇るゴンドラの窓から夜景を眺めるふりをしていた私の隣に、蓮さんが移動した。


近い近い!


心臓もたないよ!


「や、夜景と月が綺麗だなーって外見てた」


私の馬鹿馬鹿!!なんでもうちょっと素直に気持ちを言えないんだよぉ!


蓮さんはくすりと笑って私の手に自分の手を添えた。


どうしよう、どんな反応すればいいのか分かんない!


けどこの手を振り払いたくない!



つーかもうすぐ頂上に来ちゃうじゃん。頂上で告白しないと、せっかくのチャンスが水の泡だよ。


ああもう頭がパニクってんだけど。素直になれないって不幸体質どうにかなれ。


[付き合って下さい]って言うだけじゃん。早く言わなきゃ!