結局、菜月達のグループは店のラストまで居残って、さんざん悪酔いして絡みまくっていたから辟易した。


いや、辟易したのは連れの菜月の先輩達だけど。


こいつらときたら「もぉ帰れなぁい。海野さんおねがぁい、お部屋に泊めてぇ」なんて背筋が凍るような戯言をぬかしやがった。


誰が泊めるかよふざけんな。


それらは聞かなかった事にして、……問題は菜月。



酔ったまま寝てしまった菜月を、それこそ持ち帰ろうかと真剣に悩んでいたら店にまだいた中井さんが送っていくとか言い出した。



なんっで菜月をあんたなんかに任せなきゃなんねーんだよ。たとえ神が許しても俺は許さねぇ。そんなあぶねー真似できるか!



「信用できねぇな。大体あんたは俺の姉さんに惚れてるんじゃなかったのかよ!?それがなんで菜月にまで色目使ってんの!?」

「あのさ、蓮が何を勘違いしてんのか知らないけど、ナツ…菜月の兄貴と俺は一応知人なの。だからナツの家も俺は知ってんの。だから万が一の間違いもないわけ。分かったら黙って送らせろ」



呆れたように諭してくる中井さんには滅茶苦茶腹が立った。



「……そんなに心配ならお前も一緒に着いてくればいいだろ。つーかお前、マジでナツに惚れたわけ?今日1日で?それこそ信用できねぇな」

「……何が言いたいんだよ……」


中井さんが言いたい事は分かってる。




今まで俺は女に惚れるなんてしたことねーし。

付き合うって言ったらセフレとか後腐れがなさそうな軽いオンナばっかりだったし。


その俺がまさか一目惚れとかあり得ないなんて思ってるんだろ。

俺だってどうすりゃいいか分かんねぇんだよ、畜生。


「ナツは俺の悪友の妹でな。俺はコイツが小学生の頃から知ってるんだ。だから、お前が今までのオンナとの付き合いのような関係をナツに望むなら、俺は絶対許さない」


中井さんの目が真っ直ぐに俺を射抜いた。



だから何だよ。



俺は菜月の側にいたい。


菜月の向日葵のような笑顔をいつも間近で見ていたい。




その気持ちだけじゃ足りないって言うのかよ?