「僕の名前は佐藤海人…なんかじゃなくて」
「嘘ついてたのね」
キッと僕を睨む夏木さんを無視して咳払いした
「…青条皐雅。年は29歳、君より3歳年上だ」
「セイジョウコウガ?複雑な名前ね」
どこか遠い河の名前でも呟いてるようだった
「素敵な名前だろ?」
僕は微笑んでみた
この名前は母親がつけた
唯一俺に遺された、遺産みたいなものだ
俺には母親の記憶がまるでない
俺が生まれてすぐに持病で死んだらしい
兄貴さえよく覚えてないと言っていた
だから真相はすべて、あの親父しか知らない
……都合よく作り替えられてなければいいけど

