抹茶モンブラン

 軽く泣きそうになったけど、ここで仕事を失う方がもっと泣かなければいけない事になるし…どうしようもない。
 私はこの日から1週間、独自にLINUXの操作について勉強した。
 真後ろにいるのに、彼から私に何か仕事要請があると、メールでそれが依頼される。
 口なんか利かなくても仕事が進んでしまうこの環境が、私は何か不自然だなあと思った。

「データを見て、保存したりカットしたりするだけだから、それほど詳しいところまで知らなくていいから」

 週明けにそんなふうに言われて、“だったらそれを早く言ってくださいよ!!”と頭が切れそうになった。
 ほとんど寝ないでUNIXの事まである程度勉強したのに。
 でも、実際に操作をしてないから、いまいち感触が分からなくて不安になっていたところだった。

「実際にどんな事をやればいいんですか?」

 そう聞いたら、彼はめずらしく気分が乗ったのか、私にUNIXについて簡単に説明してくれ、コマンド操作を実際にやって見せてくれた。

「画面が固まったりして、どうにもならない時は僕に声をかけて。勝手にリブートとかしないでね」
「はい、分かりました」

 リブートっていうのは、コンピュータを再起動する事なんだけど、単体のPCと違ってデータを共有しあっているUNIXを下手にいじるのは禁忌らしかった。

 何だかキーボードに触れるのも怖い。