抹茶モンブラン

 私が踏んできた失敗の原因は、結局私の中にあるんだと思っている。
 自分の望む将来像とか、どういう人とならその将来を生きられるのか……とか、そういう「生き方」を決めていなかったのが原因なんじゃないだろうか。
 だから男性から好かれると、“好かれた”という事実だけで舞い上がってしまっていた。
 人を愛するっていう事を、私はわりと簡単に考えすぎていたような気がする。

 堤さんがもし、私を人形みたいに思っているなら、明日にも仕事を辞めようと思っていた。
 そんな役目だったら、私なんかよりもっと適任がいるはずだ。
 プライドを捨ててまで今の仕事にかじりつく気にはなれない。

「堤さんは、私の何をいいと思ってくれたんですか」

 私はそんな事を聞いていた。
 せめて内面的なものを認めてくれているなら……という微かな期待が残っていた。

 遠くに見える東京と千葉の夜景が、思った以上に綺麗で、心も少し開放的になった。
 堤さんもその景色を見ながら、ホウッと一つため息をついた。

「……だから、さっきも言ったみたいに、存在だよ。外見がどうこうじゃなくて……何ていうか。笑顔を見るだけで嬉しくなる。職場ではこんな親しい口は利けないけど、たまにこうやって君と話したり笑ったりしたい。人間らしい気持ちを取り戻したいんだ……おかしいかな、こういうの」

 笑顔。
 私、そんなに笑顔になった事あったかな。
 
 そう思うぐらい数少ない私の笑った瞬間を、彼がキャッチしていたっていうのは驚きだ。