「うわ、やっぱり海って風強いんだ」

 私は思わずそんな事を言ってスカートを押さえた。

「上に上がるともっとちゃんと夜景が見られるよ」

 堤さんは泣き腫らした私に余計な事は言わないで、上にあがっていった。
 一人で駐車場に残っているのも嫌だったから、私はその後ろに従った。

 お店は食事する場所が少し開いていたけど、人はほとんど居なかった。

「何か食べる?」

 そう言われたけど、私は首を横にふった。
 何も食べたくない。
 胸に苦しいものがつっかえていて、とても固形物は通りそうになかった。

「んじゃ、ちょっと待ってて」

 そう言って、彼はスタバに入って行った。
 思いっきり甘いキャラメル味のコーヒーを買って、私に「どうぞ」と手渡してきた。

「……ありがとうございます」

 さっきまでの彼に対する怒りが和らいで、私はその暖かいコーヒーを少し飲んだ。
 ホッとして、またポロッと涙がこぼれた。