抹茶モンブラン

 紗枝がいつごろから僕をそういう対象として見ていたのかは分からない。
 ただ、鈴音は心の敏感な女性だ。
 紗枝の心を、きっとずっと前から気付いていたに違いない。


 紗枝は車椅子の生活になり、病院を退院した後のケア問題などが深刻になってきている。
 今後彼女をフォローするには、どうしても彼女を近くで介助する誰かが必要だ。僕が血の繋がった家族なら、一緒に住んでどうにかしてやれたのに……。

 異性として愛しているのは鈴音だけだ。
 この気持ちは多分一生変わらない。
 彼女が僕を受け入れないと言っている以上、僕は一生この気持ちを抱えて生きるしかない。


 鈴音に会えないのが分かっていながら、僕は毎晩病院の帰りに彼女と待ち合わせしていたコーヒーショップに立ち寄る。
 普段の自分なら仕事関係の書類でも眺めていそうなんだが、そこに座っている時だけは仕事をする気にはなれなかった。
 僕のつまらない冗談にも笑ってくれた鈴音の優しい笑顔が思い出されて、思わず胸に悲しい気持ちがこみ上げてくる。