抹茶モンブラン

SIDE光一

 突然の事だったから、僕は最初鈴音との別れを拒んだ。
 でも、鈴音の真意を直接聞き、僕は彼女の決断を否定出来なくなった。

 紗枝の僕に対する気持ち……。

 それが男女を意識するものだったと、今まで気付かなかった自分の鈍さに呆れた。
 兄、鮎川の代わりと思って慕ってくれているものと思っていたし、彼女ほどの容姿なら素敵な恋人を見つけるのも苦労はしないとも思っていた。
 でも、言われてみると、彼女から付き合っている男の話というのは聞いた事が無かった。

 紗枝が今僕を唯一の生きる支えとしているのを知り、その為に鈴音が身を引いたのが分かった。
 鈴音という大切な存在の消えた僕の心には、大きな穴が空いた。
 それを埋めるものはもう一生見つかりそうもない。