事務の女性達の間では、“堤さんの彼女にだけはなりたくない”という話しはちょくちょく出ていた。
仕事しか頭に無いから、彼女になってもどうせ放ったらかしになるに決まってる……とか、結婚したら亭主関白でひどい目に合いそう……とか、まあとにかく幸せにはなれないだろうっていう結論だ。
彼の何を知ってるでも無い人たちが、そう言っているのを聞くのは気分は良くなかった。
でも、そんな悪評高い堤さんと一緒に食事をするというのは、やや違和感があった。

ただ食事を一緒にするだけなのに、正直、かなりの緊張感が体に走った。

「それとも僕との食事は嫌かな」

想像してたのと違う、わりと紳士な態度で彼はそう言った。

「いえ、そんな事ありませんよ」

嫌そうな顔でもしてしまったんだろうか。
私は慌てて笑顔を作った。