「でも小山内さんが思った以上にいい方で安心したんですよ」

 私が本心をそのまま伝えると、小山内さんは首を横にふった。

「そういう期待させる事を言ったら駄目ですよ、俺は紳士じゃないですからね」

 こんな言葉の後、“今夜は少し飲みませんか”と言われた。
 何となく彼が思ったより私に恋愛感情に近い感情を抱いているのを感じて、軽く警戒心が出たけれど、少しなら……と、付き合った。


 軽い食事も出来る居酒屋で、私は梅酒を頼み、小山内さんはビールを頼んだ。
 昼に見た姿と違って、オレンジのライトの下にいる彼は、やはり30歳を超えた男性なんだなと思わせる大人なムードを持っていた。

「本当にね……恋愛なんて面倒くさいばっかりで。実はもう二度とゴメンだと思ってたんですよ」

 そう言って、彼はジョッキを少し傾けてビールを一口飲んだ。

「何ていうかな、ちょっとしたギャンブルに似てますよね」
「ギャンブル?」

 とっぴな意見を言うところも久美に似ている。