何となくすっきりしない日々だけれど、時々小山内さんとは会っていた。
 昼ごはんを一緒に食べるくらいで、特に夜遅くまで一緒にいるような事はなかったけれど、自分の中にたまったストレスを彼と話す事で少し解消出来た。
 ある意味久美よりもさらに小山内さんはズバッとした意見を言う人だ。

「で、鈴音さんはどういうつもりで俺と見合いしたんですか?」

 今までその事には触れてこなかった彼が、ふと思い出したようにそう聞いてきた。

「それは……まあ、両親の強い勧めもあって」
「それはたてまえですよね。俺が知りたいのは、あなたの本当の心情です」

 組んでいた足をストンと下におろして、表情は穏やかに小山内さんはそう言った、
 狭い喫茶店にいたから、煙がこもるのを考えて、彼はタバコを口にしないでいてくれた。
 私はどうにもこの人には適当なごまかしの嘘はつけないんだなと思って、自分も失恋したのだとだけ伝えた。そして、その悲しみをごまかす為にお見合いの話を受けたのだ……と。
 まだ彼を愛している事や、鮎川さんの事情などはさすがに話さずに黙っていた。
 小山内さんも、それ以上は突っ込んでこなくて助かった。

「……そうですか。いえ、俺も最初は前の彼女を忘れる為にもちょっと別の女性と会ってみるのもいいかなって失礼な気持ちでお見合いしたんですけどね」

 こうは言ってみても、彼の言葉に不謹慎なものはない。

「でも、こうやって鈴音さんと何回か会ってるうちに、もう少し近くなれないものかなって考えるようになって。すみません、別にプライバシーを侵害するつもりじゃなかったんですけど」

 強引な質問をしたかなと気になったようで、彼は申し訳なさそうにそう言った。