「小山内真澄(おさないますみ)です、どうぞよろしく」

 想像していたよりずっと若い雰囲気の痩せた男性が、そう言って深々と頭を下げた。
 確か32歳だと聞いていたけど、パッと見はとても30代には見えない。
 逆に私の方が老けて見えてしまわないか気になるほどだ。

「真澄は鈴音さんのお写真を見て、すぐにお見合いしたいと言いましてね」

 相手方のご両親がそう言って微笑んだ。
 外に出るのが苦手らしいご両親は、料亭の雰囲気にも少し恐縮している様子だった。

「うちの娘はこの若さですけど、もうバツがついてしまってますの……本当にそれはご承知なんですよね?」

 母がどうしてもそこが気になるようで、念押ししている。

「関係ありませんよ、事情は伺ってますし。全く鈴音さんには非が無かったと聞いております。だいたい、こんな綺麗な人の縁談を断る人はいないかと……」

 ハキハキとした気持ちのいい声で小山内さんは、そう言って私に少し微笑んで見せた。

「やめてください。全然私はそんなんじゃないですから」

 私は初対面の人から突然「綺麗な人」なんて言われて、やや慌てた。
 もっとどうでもいい人を想像していた。
 再婚だと聞いてもお見合いを申し出てくる初婚の男性だ、それなりの理由があるのかと邪推していた。
 なのに、小山内さんは全くそういう裏を持った人ではない印象だった。
 こざっぱりとしたスーツ姿がとても似合っていて、営業の仕事をしているというのを聞いて納得した。
 人と接するのに慣れている感じがしたのは、そのせいだ。