「……疲れてるっていうか、もう限界かもしれない」

 隣に座ると、彼は言葉少なに私を抱きしめてきた。

「限界?体調悪いんですか?忙しすぎて、ちゃんと食事とってないとか……大丈夫ですか?」

 心配になって、私は彼の痩せた体をぎゅっと抱きしめる。
 プールで鍛えていた体が半年で一回り小さくなった気がした。

 この人は……本当に仕事で命を削っている。

 高田さんみたいに「仕事は趣味を楽しむ為の一つのアイテムに過ぎない」というスタンスとは全く違っている。
 日本人の感覚では、どうしても仕事を頑張るのが美しいという感覚があるんだけれど。
 冷静に考えると、こんなに追い詰められて毎日過ごさなくてはいけない生活っていうのは果たして幸せなんだろうかという疑問がわく。

 でも、これも光一さんにとっては生きる証として大事なものらしいから、仕事量の事をどうこう言う事は出来ない。