次の日の放課後。

部活終了のチャイムが鳴ると共に、来夢はタオルと冷たいスポーツドリングを持ってグランドに飛び出た。


何て言おう?? 『ずっと前のお礼です』?? 私の事覚えてるかな。
『これ、使ってください!!!』?? 親しくないのにイキナリ言っていいもんなの??
 
…とにかく、渡せればいいや。私を知ってもらえれば、それで…。

サッカー部員達がさっさと帰り始める中、彼だけは1人、まだ練習を続けていた。

するとタイミングよく、雅紀は練習をやめ、ボールをかたずけ始めた。

胸がドキドキする。足がすくむ。

頑張れ、自分…。

「あの!!」

来夢の声に気付いたらしく雅紀がこっち向く。
「あ、前の!!!」
来夢にむけて笑顔を見せた。

覚えててくれた…!!

「あ…えと、お疲れ様です!! よかったらコレ、使ってください!!」

来夢は下を向きながら雅紀に言った。

すると雅紀は明るく、

「おー!! ありがとな♪♪ なんか悪いな。」
と言って、タオルとスポーツドリンクを受け取った。

「ぜ…全然っ!! では、またその…さよならっ!!」

来夢は雅紀の顔なんかまともに見ず、走り去った。