「あ…。雨…。」

5月上旬のある日。来夢は傘を持っていないのに急に降り出した雨に困っていた。

傘持ってないし…、どうしよ。駅まで走ろうかなぁ…。

下駄箱でローファーに履き替えとりあえず、ぼっ立ってみる。

その時、

「使う??」

いきなりの声に驚いてパッと顔を上げると、見知らぬ男の人が来夢に傘を差し出していた。

「…え??」
「一年生?? この傘、使いなよ♪♪」
「でも…、」
「いいっての!! 俺、もう濡れてるし。ハイ!!」

確かによく見るともう既に濡れている。

その人は来夢に傘を渡すと雨の中に消えた。

来夢は困ったが、彼の善意に甘えることにした。

真顔だとカッコイイのに、笑うとカワイイ…。


―トクン―…


あ…、お礼言ってない…。


この時はまだ、この胸の鼓動に気付いてなかった。

その日から私は毎日彼を目で追うようになっていった。

そして、彼の行動一つ一つが気になってしょうがなくなった。

…恋してるって、彼が好きだって、気付いた。