『知り合い…っつーか、前に傘貸しただけ』

頭の中に何度もこだまする。

…やっぱり、雅紀先輩にとって私はそれだけの存在だったんだね。

名前すら…言ってくれなかった。

来夢は数秒その場に間立ち尽くした。

腕なんか組んじゃって、あんなに行きたかった雅紀先輩の隣に、あんなに簡単に…。


【青リンゴ】ちゃんってなんだよ…。

来夢は自分の携帯のストラップを見る。

「【青リンゴ】じゃなくて、【ライム】なんですけど…。」

誰にも聞こえないくらいの声で、つぶやく。

黄緑色の小さな果物が鈴と一緒に揺れた。



私は雅紀先輩が好きで、雅紀先輩は愛する彼女がいて入る隙間なんてないのに。

もう忘れたいのに…。

どうして忘れられないの??


未だに目で追ってる。

まだ「もしかしたら」なんて思ってる。