『知り合い…っつーか、前に傘貸しただけ』
頭の中に何度もこだまする。
…やっぱり、雅紀先輩にとって私はそれだけの存在だったんだね。
名前すら…言ってくれなかった。
来夢は数秒その場に間立ち尽くした。
腕なんか組んじゃって、あんなに行きたかった雅紀先輩の隣に、あんなに簡単に…。
【青リンゴ】ちゃんってなんだよ…。
来夢は自分の携帯のストラップを見る。
「【青リンゴ】じゃなくて、【ライム】なんですけど…。」
誰にも聞こえないくらいの声で、つぶやく。
黄緑色の小さな果物が鈴と一緒に揺れた。
私は雅紀先輩が好きで、雅紀先輩は愛する彼女がいて入る隙間なんてないのに。
もう忘れたいのに…。
どうして忘れられないの??
未だに目で追ってる。
まだ「もしかしたら」なんて思ってる。

![[中] 0o 面影 o0](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.762/img/book/genre1.png)