[3番線、電車がまいります、
ご注意ください、]





女性のアナウンスが聞こえて
ふと来る電車の方向に目を向けた


長い列をなした銀色の箱が到着し
僕は乗り込んだ


体感速度が速まる車内から
外の流れる景色を
眺めていると…………





相変わらず懲りないなぁ
あの後輩

僕が酒苦手なのに
いつ気付くんだろう……






ふとさっきのやり取りを思い出した



大学のサークルの
飲み会での大失態以来、
僕は人前では酒は飲まなくなった


飲み会に
行かなければならない時は
お茶などを飲んで誤魔化していた



それぐらいに酒に弱いのだ





いかん、
余計なこと思い出した……





と内心顔を歪めながら
天井にぶら下がっている広告に
目を移した




一番最初に目に入ったのは
ノンアルコールのビールの
広告だった




思わず顔をしかめる



ビールの広告の隣の広告は
若い女性に人気の
ファッション誌だった


何度かテレビで
目にしたことのあるモデルが
夏物の服に身を包み、
ポーズをとっている




ふとそのモデルが身に付けている
スカーフを見て何かがよぎった






なんだっけ……
つい最近、
見た気がするんだけどな………








霧がかった頭が晴れたのは
次の日の朝だった