「男なら普通でしょ?」
ケロリと悪びれもなく言う沖田。
「月ちゃんは危機感が足りなさすぎるんだよ。」
「お…。」
「?」
「お、沖田さんの馬鹿ーーーーっっ!!」
真っ赤になった月から、高々と響き渡るビンタもらったのだった。
余談になるが、月以上に危機感のない沖田は月から仕返しに風邪をもらい数日間寝込むことになった。
後日、沖田の風邪も回復し今や隊士達を薙ぎ払いながら笑っていた。
藩命により新撰組帰還を許された沖田。蛍との縁談は白紙に戻ったが、命令は取下げられていない。
新撰組の主力となっているのは沖田達近藤局長率いる八木邸の部隊。それと対するは芹沢局長率いる前川邸。こちらには芹沢の部下しかいないため、人数も少数であった。
そしてこの日、いよいよ近藤達が動き出す。
まず最初に暗殺を決行するのは芹沢の側近の一人『殿内』だ。
この者は芹沢の側近ながらも、近藤達にも近づき主が定まらない男であり、資金等を貯蓄したりと、陰で色々な悪さをしていた。
本来ならば局中法度により、切腹。というところだが、芹沢側の人間のためそう簡単にはいかない。
実行者は近藤と沖田である。
近藤はまな弟子である沖田を仲間殺しにはしたくないと言ったが、沖田が自分に与えられた仕事でもあるからと言って聞かなかったのだ。
深夜、月が美月と一緒に眠っていると、廊下から足音が聞こえ目を覚ます。
「……?」
目を擦りながら廊下側の障子を開けると、沖田が一人歩いて行くのが見えた。
「沖田さん……?」
こんな夜中に出歩くなんて珍しい。何だろうと思いながら、追い掛けることにした。
外は雪でも降り出すのではないかと思うほど寒かった。
すぐに追いつくはずが、着物を着替えていたせいで途中で見失っていた。
辺りを見回しながらその姿を探す。
沖田は四条大橋の上で遠くを見つめながら立たづんでいた。
一体何をしているんだろうか……。
まさか、逢引とか……?一瞬春画でのことや美月のことが頭に浮かぶ。
月は気づかれないよう橋の下へと移動し、少し遠いが沖田の顔が見える位置へと来た。
沖田は黙って遠くの方を見ていて、何かを考えているようだった。
と、橋の向こうから誰かが近づいてくると、沖田の目がそちらに鋭く向いた。
どうやら相手は男のようだ。

