それが無性に寂しくて、胸がジクジクと痛む。


沖田はそんなことはないのか、ふーんと言わんかりに口を結んだまま永倉の方を向いた。


「それより新八さん。あれ、見せて下さいよ。」


「あれ?」


「この間平助達と楽しそうに見てたでしょ?あれですよ。」


「ああ!あれな、春画な。総司も見るのか?」


「見ますよ。どんなのか興味がありますし。」


沖田はあてつけるようにチラリと月を見ると永倉と一緒に何処かへと行ってしまった。


春画……。


何処かで聞いたことがある名前だ。


さっきの沖田の目。


いったいなんなのだろうか……。月は頭を悩ませるしかなかった。







沖田達が行ってからどうもこうも、気になって仕方がない月は、春画が何かを確かめるために部屋を出た。


するとすぐに沖田達を見つけた。


気づかれないようにそっと近づいて、覗き込もうと腰を曲げる。


何か派手な絵が見える。そう思った瞬間、沖田が本を閉じ振り返った。


「なに?」


「え、えっと……それなんですか?」


「春画だけど?」


「おう月ちゃんも興味があるのか?」


永倉のにかにかと笑いが向けられる。それほどに楽しいものなのだろうか。


「なんだったら、もう一冊貸すぜ?」


と、自分が持っていた本をヒラヒラさせる永倉。


「月ちゃんはだーめ。お子様は部屋に戻って寝てなさい。」


永倉の本を奪い取って、月に背を向けて本を開く沖田。


そう言われれば維持でも見たくなる。


「永倉さん!もう一冊貸して下さい!」


「えっ!」


「早く!!」


「あ、ああ……。」


ムキになって怒る月に、驚く永倉は自分の部屋へ本を取りに向かった。


「まったく、こんなものが見たいだなんて、月ちゃんは悪い子だね。」


「見ている沖田さんに言われたくありません!!」


「ほら、そんなこと言ってると、また熱が上かっちゃうよ?」


「そんなことありませ……あっ!」


「危ない!!」


バランスを崩し縁側から落ちそうになった月をとっさに、沖田が抱き留める。


抱き留められる着物からほのかにお日様のにおいがした。


「大丈夫?」


「!」


ハッと我に返り、沖田から飛びのくように離れる月。


「す、すみません!」


「まったく無理するから……。熱上がってるんじゃない?身体が熱かったよ。」