「文句ばかり言ってたら、それこそ土方さんにどやされっぞ?諦めろ新八。」
「なんだよ佐之!お前はいいよな、槍を扱うってだけで、十番組だけ一人占め出来んだから……!」
槍は刀より長いため、万が一他の隊士に当たったり目を怪我させないために、十番組のみ二組合同稽古は避けられていた。
「だったらお前も剣だけじゃなくて、槍も学べばいいだろ?俺が教えてやってもいいぜ?」
「それだけは遠慮しとく!俺は剣に命をかけた男だから!他のものには興味はねぇんだ!」
「ふーん。興味だけなら充分あると思うけど?」
「総司!」
いつからいたのか、開いた障子によりかかりながら沖田が立っていた。
「お前いつからいたんだ?」
「さっきからだけど?病気の女の部屋で、男の騒がしい声が聞こえたから、襲いに行ったんだと思ったよ。」
沖田は不機嫌そうに言いながら部屋に入ってきて座る。笑っているように見えるが、目だけは相変わらず笑っていない。
「そんなことするわけねぇだろ!新八じゃあるまいし……。」
「なんだよ佐之!俺だってそんなつもりはねぇよ!!なあ、月ちゃん?」
「ええ、二人共お見舞いに来て下さったんです。」
「そう……。」
と、目を細める沖田だが、なんか殺気のようなものを出している。それに気づいたのか原田が逃げるように立ち上がる。
「おっと…!もうこんな時間だ!俺達も稽古に戻るかな。おい、新八。お前も付き合え!」
「なんだって俺がお前に付き合わなきゃなんねぇんだよ!?たった今まで稽古してたんだよ!!」
察しが悪い新八がもう反撃に出る。
「あ、新八さんは残っててくれてかまいませんよ?頼みたいことがありますし。」
呆気欄と承諾してしまう沖田。今の殺気はなんだったのだろうか…。
「じゃあ、俺は戻るぜ。じゃあな月。」
にこりと笑いかけてから、原田は部屋を出て行った。
「ふーん、良かったじゃない、あんなに想ってくれる人がいて。」
原田に向ける月の笑顔が気にくわなかったのか沖田が意地悪く言った。
「そんなんじゃあありません!原田さんは沖田さんと違って、私を見舞いに来てくれたんです。」
沖田から顔を背けていじけたように言う月。
「でも相手はそう見てたりして。」
「どうやったらそう見えるんですか!?」
色恋沙汰の話になると、なんでか喧嘩になってしまう。

