「とにかく!私と沖田さんはそんな仲ではありません。」
「本当に?」
「本当です。」
見透かされないよう毅然として言い放つ。美月は小首を傾げていたが、納得したように頷く。
「そっか……、ならいいんだ!」
月の答えにホッとしたのか、嬉しそうに笑う。
「美月さんは、沖田さんが好きなんですか?」
「えっ!そう見える?!」
慌てて頬に両手を当てる美月。顔が真っ赤に紅潮していた。
「ええ…。」
「そっか…、その皆には内緒だからね?」
唇に指を当てて内緒の仕草をして、恋する乙女らしく微笑みながら、美月は中へと入っていた。
その背を見ながら、胸の中がざわついてならなかった……。
新撰組は今までとは比べものにならないぐらい、息を弾ませはじめていた。
身分が低いながらも、命をかけて武士となりたいという者や、幹部達の旧友の者達がこぞって入隊してきたのだ。
そんな彼らを手厚く歓迎し、しばらくたった頃。
『局中法度』という掟が出された。
なんでも組織を取り締まる大切な法令だとか。きっとこれからも隊士は増え続けるだろうから、ここら辺で隊規を掲げ隊内を取り締まるということだ。
最初は文句を言っていた幹部達だが、新撰組という組織にいる以上は仕方がなく、今はその隊規を守り、隊士達と楽しく稽古をしているらしい。
今まで静かだった道場も連日のように活気づいていた。
隊士が増えたことで怪我人の世話や掃除など、小姓仕事も多くなって月達は休みなく働いていた。
そんなある日、疲れがたまっていたのか、月は風邪を引いたらしく部屋で眠っていた。
「よう、月ちゃん。大丈夫か?」
「見舞いに来てやったぜ。」
「永倉さん、原田さん。」
布団から身を起こす月。その傍らに座る二人。
「稽古はどうしたんですか?」
「ん?今は六番組と三番組が使ってる。」
「まったく、熱くてたまんねぇぜ!なんで二組合同でやるんだ?狭くて刀を振り回せやしねぇ……。」
さっきまで稽古をしていた永倉が、肩にかかった手ぬぐいで汗を拭きながら文句を言う。
道場は人数の割合に対して小さく、一組つづやっていたのでは朝までかかるため、二組合同でやっているのだ。だが、血の気の多い男達が狭い道場でぎゅうぎゅうになりながらやるっていうのもかなりきつそうだ。

