顔を真っ赤にして怒る月に、それを見て面白そうに笑う沖田。前の関係とは大違いだ。


その後、子供達と鬼ごっこをして遊んでいたが、遠くから怒鳴り声がした。


「おい!屯所で何遊んでんだーー!!」


土方がどすどすとこちらへ向かって走って来る。


「皆、本物の鬼が来たよー!逃げてーー!」


沖田が言うと、それを合図に子供達が一勢に逃げて行く。


「わー!本物の鬼だーー!」


「逃げろーー!」


「誰が鬼だ!!」


沖田は鬼の叫びも気にせず、ひらひらと笑顔で子供達に手を振る。


「気をつけて帰るんだよーー!」


「またねー宗次郎ー!」


子供達の姿が見えなくなるまで、沖田は見送っていた。


本当に子供が大好きなようだ。


「行っちゃいましたね。」


「うん、僕も早く子供が欲しいな。」


「ったく!いつまで遊んでんじゃねぇよ、総司!」


「あれ?鬼さんまだいたんですか?鬼ごっこもう終わりましたよ?」


ここぞとばかりに追いついた土方に、クスクスと笑いながら言う沖田。


まったく反省の色はない。


「そんなことは分かってんだよ!さっさと、仕事に戻りやがれ!」


「はいはい。」


面倒臭さそうに頭の後ろで手を組みながら、屯所へ戻って行く沖田。それに続いて月も戻ろうとすると、クイッと袖が引っ張られる。


「どうかしたんですか?」


俯いた美月が言いにくそうに口ごもっている。


「あ、あのね…ちょっと聞きたいんだけどいい……?」


「ええ…。」


「月ちゃんって、沖田さんと恋仲なの?」


「えっ!?」


思わず声が裏返ってしまう。


「やっぱりそうやったんやね…!」


「い、いや!ち、違います!そんなんじゃありません!!」


おもいっきりブンブンと首を振る月。


たしかに、それらしいことはあったが、決して恋仲というわけではない。むしろ、片想いというのが正確かもしれない。


「でも、沖田さんはいつも月ちゃんを目で追ってるよ?」


「それは追ってるだけです!そこに恋愛感情なんてありません!あるんなら……。」


「………?」


あんなことにはならなかった。沖田に桂とのことを誤解された時のことを思い出す。


沖田の態度は屯所に戻ってから変わったが、内心のところは分かっていないのだ。


月は黙り込んでしまう。


「月ちゃん……?」