沖田が出て来ると、毎回のように口を噤んで大人しくなる美月。頬がほんのりと赤くなり、恥ずかしそうにしている。
「ほらもう。沖田さんがついでなんて失礼なことを言うから。」
「い、いいんよ月ちゃん!」
モゴモゴしながら美月は月の背に隠れる。そんなやり取りをしていると、沖田が肩車をしていた子供が月を指さした。
「宗次郎!この人だーれ?」
「僕のお嫁さんになる人だよ。美人でしょ。」
「!」
悪びれた様子もなくハッキリと口にする沖田。
美月と一緒に月の動きが一瞬、ピタリと止まってしまう。
「お、沖田さん!冗談止めて下さい!笑えませんよ…!」
「なら冗談じゃなくて、本当にしようか?」
「沖田さん…!」
前とは違い自然とこう言ったことを沖田は平気で口にしてしまう。一人思い悩んでいたことが馬鹿みたいに思えてくる。
「じゃあ、私は仕事に戻りますので、後は頼みますよ?」
「はい。」
山南はそう言って戻って行った。
いつもはもう少し遊んでいくのに、少し調子が悪いように見えた。気のせいだろうか。
月が山南の行った方向をみていた。
「……どうしたの?」
「山南さん顔色少し悪いような気がしましたから……。」
「最近、忙しいみたいだからね。」
新撰組の繁栄のために、毎日忙しく働いている山南。総長という立場だから仕方がないのかもしれないが心配になる。
「そんなに心配しなくてもいいよ。またすぐに元気になるから。」
「ええ……。」
沖田の顔が近づくと月の背に隠れていた美月が袖を引っ張る。
少し力がこもっているように感じられた。
美月を見ると彼女はしおらしく女性の目をしていた。これは恋だとすぐに分かった。
沖田の方はまったく気づいていないのか、それとも気づかないフリをしているのか、どっちか分からずにいた。
胸がチクリと痛む。
すると周りで遊んでいた子供達が走って来る。
「ねぇ!お姉ちゃん達も遊ぼうよ!」
「ああ…、そうだね。何して遊ぶ?」
不安に思っていても仕方がない、月はその思いを払うように、無理矢理笑顔をつくる。
「お医者さんごっこがいいな!」
「沖田さんが言ってどうすんるですか?私はこの子達に聞いてるんですよ?」
「えー、せっかく着物を脱がせられると思ったのに……。」
「沖田さん!いい加減にして下さい!」

