他の者達は知らないが、沖田は月の事情を知っている。そして今までたった一人で頑張ってきたのも。


周りが男だらけなのだから、せめて月に女友達になれる相手を選ぶために、同年代と言い出したのだろう。


教育も同じ年代なら、楽しくやれる。横にいる沖田は優しく微笑んでいた。


彼なりの優しさなのだとそう気づかされ、遠くに感じていた沖田に気にかけてもらったことが嬉しくて、月の瞳の奥が熱くなる。


「泣くなら僕の胸を貸すよ?おいで。」


「いえ、大丈夫です…。」


そんな些細なことも嬉しくて、溢れてきた涙が見えないように、後ろを向いて涙を拭った。









それからしばらくしてから、『黒崎美月』という可愛らしい女の子が、小姓としてやって来た。


「黒崎美月といいます。よろしくお願いします。」


広間に集まっていた幹部達(新撰組の組長やその上の者達をいう)に頭を下げる美月。


月以外の若い女性を見て、目を輝かせる永倉以下2名。


まったく正直なものである。しかも美月は月とは違い、色白の上に巨乳という美貌を持ち合わせていた。同じ女ながら少々寂しい気もする。


「へぇー!美人じゃねぇか!」


「本当に俺達の小姓になるのか?」


「なんかもったいねぇよな……。」


「お前ら色目を使ってんじゃねぇよ!手を出したらぶっとばすぞ!!」


「もー物騒だな土方さんは…。そんなことを言ったら、小姓さんやめちゃいますよ?」


永倉達に一喝を入れたつもりが、逆に沖田に一本取られてしまう。


「うるせぇ…!」


「すみませんね。騒がしい者達ばかりで、悪い人達ではないのですが、裏が黒いだけなんですよ。」


「山南さん…、全然フォローになってねぇよ……。」


もちろん山南は無意識で、いつものようにニコニコと笑顔を称えていた。


「それにしてもよく、こんな所に身を寄せる気になりましたね。」


ここは泣く子も黙る新撰組だ。その評判は悪名のほうが強かったりする。


「前には一度、浪士に絡まれているところを新撰組の方に助けて頂いたんです。」


「なるほど。それで来たってわけか。」


「まあ、これからは一緒に生活することになるんだ。仲良くするのはいいが、隊規を乱すことはすんじゃねぇぞ?それと月、今日から黒崎と同室だ。女同士仲良くやれ。」


「はい!」