そして、月と沖田は無事に新撰組へと帰還を果していた。
結局の所、長州の情報を手に入れることは出来なかったが、二人が無事に戻り、皆はとても喜び、近藤など泣いて二人を抱きしめるほどであった。
月は沖田から不意打ちをかけられ、しばらくの間首が痛かったが、あれから沖田との関係は元に戻っていた。
事態は一旦収拾出来たこともあって、皆で宴会をあげていた。
久々の面々に囲まれ楽しむ月。その中には斎藤一の姿もあった。
武芸対決の一件や今までの経緯もあって、月は本格的に剣を学び始めることにした。
最初は沖田が稽古をつけると言い出したが、彼の剣はさすがに怖いので断り、指導が上手い斎藤に教えてもらうことにしたのだ。
もちろん習うからには容赦がないのだが、斎藤は女だからと言って、手を抜くことなく真剣に教えてくれていた。
そんなこともあり、今や月と斎藤の関係は師弟の関係であった。
そのことが気にくわないのかは知らないが、沖田も何かとちょっかいを出して来て、気づけば一緒にいることが多くなっていた。
人から見れば仲の良い友人と言ったところであろうか。
そんな感じで沖田との仲も安定しつつ、斎藤との距離もそれなりに縮まっていた。
「ちょっと月ちゃん。何処見てるのさ?」
「え……?」
「一君の顔に何かついてるの?」
月がついつい斎藤の方を見ていたら、横に座っていた沖田に睨まれる。少しお酒が回っているのか、頬がほんのりと赤くなっていた。
「いえ、なんでもありません。久しぶりに皆で集まりますから、なんだか懐かしく思えちゃって…。」
「そう?……まあ、来たそうそに見合いだの結婚だのって騒いでたからね。」
「沖田さんも久しぶりに、お酒を飲んで楽しそうです。」
「まあね。向こうじゃあこうして飲めなかったからね。こっちの方が気が楽かな。」
そう言って、はいっと杯を差し出される。
「もう飲み過ぎですよ?そのへんにしとかないと、後が大変ですよ?」
久しぶりの宴会だけあって、沖田もかなりの量を飲んでいる。永倉や原田達に比べれば、沖田は酒癖が悪いわけではないが、やっぱり心配になってくる。
「大丈夫だよ、だからついでよ。」
とまた杯を押し付けてくる。仕方なく徳利から酒を注ぐ。
「にしても、こうやって全員揃って酒が飲めるとは幸せなことだな…!」

