「そこに、【土方歳三】という人がいるから、その人にそれを渡すんだ。そしたら状況を察してくれて、助けてくれるはずたから……。君はそこへ行くんだ。」


「でも沖田さんは……?沖田さんはどうするんですか……?」


「大丈夫。僕もすぐに後を追い掛けるから、それからもう一つ、都に着いたら、その笛を……吹いて欲しい。」


月の首から下げられている笛を見る。


それは、鷹を呼ぶ笛。伝令や緊急事態を知らせるものだ。


いまさらながらに、それを理解する。


「沖田さん……。」


「行くなら急いだほうがいい。今ならまだ、間に合うはずだから。」


「………分かりました。助けを呼んできます。」


「うん……。」


月は都へ行くことを決め、沖田の側を離れる。


だが、こんな所に一人沖田を残して行くことへ、罪悪感を感じる。


何度も何度も振り返りながら、月は薄暗い森の中を歩いて行った。


沖田もその姿が見えなくなるまで、月を見送った。



「………ゴホッ!ゴホッ!!……ゲホッ!!」


そして、沖田がまた血を吐いていた。








追っ手の兵士達は確実に、沖田の元に近づいていた……。


遠くで笛が鳴る音と、風で感じる敵の気配を感じていた。


沖田は立ち上がり、もう一度、黄土水を口にした。


すると、敵が木の陰から姿を現した。


「…………。」


全部で数十人は軽くいるが、どうやら全員薩摩の下っ端のようだ。


沖田は敵の位置を確認すると、腰の刀を抜いた。


「まったく……、君達もしつこいよね?いつまでついてくるつもりだったのかな?」


茶化すようにほのめかす沖田。しかし、その言葉とは逆に、その目は殺気に満ちていた。


敵が踏み込んで来たと同時に、戦いの火蓋が切られる。


森の中で刀がぶつかり合う音と共に、鮮血が舞い散った。








戦いは長期化するにつれて、沖田の方がふりになる。


事実、沖田はもう立っているのに、限界であった。


「はぁはぁ……!」


周囲には兵士達の死体が転がり、血を汚していく。


そこへ、ようやくそれらしいお方が、倍の数の兵士を背に姿を現す。


「……ようやく見つけたぞ?あの時はよくも下手な真似をしてくれたな?」


その者が刀を沖田に突き出す。沖田はそれに応戦しようと刀を構える。


「僕はあんた達に睨まれる覚えはないんだけど?」