着物を回収しなかったのを怒っているのだろう。
「……蛍様、これはここでは洗えません。何処か他の場所でないと。」
蛍の着物は月達が着ている着物とは質が違うため、めったやたらに洗えないのだ。そのため、蛍の洗濯物だけ回収しなかったのだ。
「なら、その場所に持って行けばいいじゃない。」
「その場所は何処かの藩邸に入らなければなりません。私達はそんな場所に気安く入れる立場ではないので…。」
「なら、私のだけ洗わないってこと?」
ますます気分を害す蛍。
自分のだけ洗われないのが気に食わないのだ。
「……次期に近藤さんが長州から使いをよこすと言っていました。だから、それまでご辛抱下さい。」
月は丁寧にそれを蛍に返す。
「もう、いいわ!さっさと自分のことでもしたら…!」
面目丸つぶれにされ蛍は着物を奪い取り、吐き捨てるように言って戻って行った。
月は再びしゃがみ込んで洗濯の続きをする。
すると、玄関の方から人が入って来る。
どうやら一番組が稽古から戻って来たようだ。
どやどや隊士達が解散して行き、沖田がこちらへとやって来た。
「お疲れ様です、沖田さん。」
「うん、君もお疲れ様。って、洗濯してたんだ。」
土間に山住となっている洗濯物に目を向ける沖田。
「はい。あ、井戸使われますよね。今、どかしますね。」
月は慌てて洗濯物を退かし始める。だが、沖田はそんなことを気にせずに、水を汲み上げる。
「いいよ、別に。ちょっと使わせてもらうだけで充分だし…。」
そう言って着物を脱ぎ始める沖田。
「ああっ……!ちょ、ちょっと!」
あわてふためきながら沖田を止める月。まさか、目の前で着物を脱がれるとは思ってもみなかった。
「そんな所で脱がないで下さいよ…!」
真っ赤になりながら、沖田を睨みつける月。だが、当の沖田は当たり前と言った顔をしている。
「なんで?脱がないと汗流せないじゃん。」
「だからってなんでここなんですか!汗流すなら、お風呂場に行って下さい!」
「えーー、昨日の残り湯で汗流せって言うの?月ちゃん、それ酷くない?」
「酷くないです!だいたいから、自分が入ったお風呂でしょ!?私はここで洗濯してるんですから、そっちに行って下さい!」
「そっか…、女湯の残り湯なら大丈夫か…。」
「へ…?」

