「は、はい!すみません…。」


とりあえず、これにて解散となる。


任務とはいえ、沖田が蛍と許婚となり、月はその世話役となっている。


次期に向こうから使いが来るとはいえ、関係維持に困る。


蛍は月を目の仇にし、月の言うことには一切耳を貸さないのだ。


裏切ったのだから仕方がないのだが、雄一沖田の事に関しては、話しかけてくる。


敵とはいえ、蛍が沖田に恋をしていることは明らかだ。それなのに、あえて敵となり京を脅かそうとするとは、まったくもって蛍のすることが分からなかった。


好きが好きではいけないのか…。


相手が敵ならば、そうするしかないのか…。



なににせよ、当の沖田は蛍が捕まってから見向きもしない。許婚になろうがなるまいが関係ないと言った感じだ。


それに考えなければならない疑問が山ほどある。


こんな時によそ見している場合ではない。


月は自分の頬をぺしぺしと両手で軽く叩き、仕事へと向かった。








各部屋を回り洗濯物を集める。


すでに洗濯物で両手いっぱいになっていた。


「えっと…、沖田さんの部屋の洗濯物は…。」


月は開いていた沖田の部屋に入り、隅に置いてあった洗濯物に手を伸ばす。


すると、着物がばさりっと落ち血に染まった羽織りを見つける。


昨日巡察だったから、その時に付いたものだろう。


沖田は傷が治ってから、今まで通りの隊務に戻り、一番組組長として仕事をこなしていた。


池田屋の一件以来、新撰組はすっかり京では有名になってしまい、今まで以上に知名度も上がっていた。そのため、新入隊士も増え、今まで以上に隊務をこなす量が多くなっていたのだ。


沖田は一番組だから、他の組長よりもその責任が重い、その上長州まで絡んでくるとなると、沖田の心労も越えたものだろう。


だから、沖田には月が思っていることを言っていないのだ。これ以上、沖田の心労を重くするわけにはいかない。


月は洗濯物を集めて、井戸へと向かった。







大量の洗濯物が集まり、月はたらいに水を汲み上げ水を張る。


一つ一つ、水に付けて洗う。


すると、後ろから声がかかる。


「ねぇ。」


「……!?」


月が振り向くと同時に、何かが月の顔に投げられる。


「忘れてたわよ。」


それは蛍の着物であった。つまり、これも洗っておけと言うのだ。