「このことは幕府も知ってるのか?」


「いいえ、幕府には伝えていません。これは我々だけの機密ですから。」


さらりと原田の質問に答える山南。その表情は諦めつつも少し希望があるように見えた。


「山南君の件もあるが、これは我々にとっても有力な情報となる。これが手に入れば、我々はいつでもおきなく戦えるというわけだ。今まで戦いに参加出来なかった隊士達も、我々と共に戦に参戦出来るんだ。有り難いことだ。」


うんうんと満足そうに頷く近藤。


確かに病も怪我も治してしまうのなら、今まで以上に戦いに専念出来、戦力も増えるということだ。


常に怪我や戦力に悩まされる新撰組にとっては有り難い情報だ。


「ま、それもそうだな。この熱さで隊士達もバテちまってるし、いざという時のことも考えると確かにそいつはいい情報だ。」


「でも、それどうやって手に入れんだよ?戦も出来ないのに…。」


不満そうに現実的疑問をぶつける平助。


「それを知るために、あの姫さんに協力してもらう。何かしら知ってるだろう。それと、山崎や島田に長州へ行って調べて来てもらう。それだけすれば、綻びが出るはずだ。」


「それはまた難しそうな明暗ですね、彼女がそう簡単に口を割らないでしょ。」


「それなら割らせるまでだ。おい、総司。」


「えー、僕がするんですか?」


土方に言われ、不満そうに口をとがらせる沖田。


「お前しかいねぇだろうが!つべこべ言ってねぇでやれ!」


「はぁ~、女の子に手荒な真似はしたくないのにな…。」


「傷だけはつけるなよ?」


土方が鋭く釘を刺すように沖田を睨む。


敵であっても蛍は大切な人質だ。傷をつけて大騒ぎでもなったら大変だ。


「分かってますよ。一緒に頑張ろうね、月ちゃん。」


「おい、月まで巻き込むなよ……。」


飽きれながら言う原田だが、月からの返事がない。


「月さん?」


「は、はい…?」


近藤に言われて、慌てて顔を上げる月。


幹部達が不思議そうに見ていたのに気づく。


沖田の冗談にも反応しないなんて、月らしくない。


「何か心当たりがあるのか?あるなら、言ってもかまわんぞ?」


「え…、あ、ち、違います!ごめんなさい!少しボーとしてて…。」


近藤に言われ慌てて周りを気にする月。


「ならいいのだが…、具合が悪かったらすぐに言ってくれ。」