藩の名誉と存続のためなら、命をも差し出さなければならないのだ。


その宿命は誰にも変えることが出来ない。


美智子はその刀を受け取った。


「……分かりました。」


その返事を聞き、寂しそうに頷く高杉。妻の手に自分の手を重ね合わせた。


「お前には辛いことばかりさせる。だが、必ず良い方向に向かうはずだ。まだ、探しているが、薫も時期に見つかるだろう。」


「あなた……。」


行方不明となってしまった娘。


その帰りを待つ両親。


長州は時代の動きと共に回りだした。









一方で、新撰組の方では池田屋から見つかった書類の中で、薬の存在が確かなものだと明らかになった。


「本当にそんな零薬みたいな薬があるのか?」


新撰組幹部は集まり合い、話し合いをしていた。


「ええ、池田屋から見つかった書類の中からいくつかその記録が残されています。」


山南はその書類を幹部達に回す。


幹部達は興味津々にその書類に目を通す。


「本当だ…!」


「まじかよ…。」


「で、この薬を使えば、本当にどんな傷でも病でも治るって言うのか?」


原田が尋ねた。


にわかに信じ難い話しではあるが、証明された以上は信じないわけにはいかない。


「はい、これは『赤水』と言って以前から長州が隠していた劇薬とも言われています。」


「なるほど、この機密を知っていたから奴らは、あの姫さんを人質にしたわけか。」


「ええ、機密が漏れれば、まずいですからね…。ですが今その薬は長州にあって、たやすく手に入るものではないということです。」


「に、してもこんな情報が隠してあったなんて、あの姫さんも桂って人も考えてなかっただろうな。口封じをしただけだし。」


あの池田屋の時に吉田は、桂に口封じのために殺されていた。それは沖田達が乗り込んで来る直前のことだった。


口封じは上手くいったものの、この書類までは奪えなかったのだ。


「ああ。」


「ですが、その桂さんが長州へ逃げたのですから、いずれにせよ我々は長州からは目の敵にされるわけです。」


「なら、戦を吹っかけても無駄ってわけだな。」


「ええ、そういうことです。会津も幕府も今は長州の動きに加え、他藩の動きも警戒していますから。戦はどの道今は難しいでしょうね。」


つまり、目の前の有力な情報も今はなんの意味も持たないということだ。