あまりにもその勢力が大きかったため、長年粛清し続けていたのだが、とある一件により過激派を出すこととなったのだ。
予想していたとはいえ、想像以上に反発が大きい。
なんとかして、彼らを静めなければならない。
「ま、それなりのことは考えてあるさ。奴らにとっては痛手になるんじゃないか?」
「ならいいが。あまり奴らを刺激しない方がいい。」
「今さら刺激したからと言って、あの浪士集団に何が出来る?心配ないさ。」
新撰組は確かにその勢力を拡大していたが、所詮は幕府の犬でしかない。犬が吠えたからと言って、長州には痛くも痒くもないのだ。
それに蛍を人質にしてるとはいえ、そんな無粋な真似をするとも思えなかった。
「ところで薬の件はどうする?まだ桜様が守っているのだろ?」
「ああ、だが…所詮はただ人間の巫女だ。やっぱり『薫』には敵わん…。」
高杉には蛍の他に二人の娘がいた。
一人は生まれてすぐに巫女となり、妃の妹【お勇】に殺されかけた長女・【薫】。
そして、その意思を継ぎ後を追うようにして、無理矢理巫女にさせらせた三女・【桜】。
どちらもこの世の者ではないが、親としては二人の娘が哀れで痛々しかった。
できれば普通に生きて欲しかったが、運命はそう甘いものではなかった。
今だ、長女【薫】の行方は知れず、その薬の鍵となる人物がいなかったのだ。今の巫女は、そのおこぼれの薬を守っているにすぎなかった。
そして、その薬は長州にとって大きな益を生むことになっていた。
「向こうに資料が渡ってしまった…。相手は薬の存在を知っている。なんとか彼女を見つけないと。時に晋作、坂本君達が言っていた提案はどうする気だ?乗るのか?」
「まだ、保留だ。片付けないかん問題がありすぎてそれどころではない。それに、そう簡単に敵と仲良く出来るか!」
「ま、そこは坂本君のお手並み拝見ということかな。」
「ま、そんなところだ。あんな馬鹿げた話し、そう簡単にまとまるはずがない。話し半分なだけさ。とりあえず、俺は妃の所に行って来る。」
「ああ。そうしてくれ。」
高杉は問題を解決すべく動き出した。
一方、娘の訃報を知らされた母『美智子』は、心配で落ち着かなかった。そこへ夫の高杉がやって来る。
「あなた…!」
「ああ、分かっている。今は無事だから安心しろ。」

