「俺達は前に進まなきゃならねぇ。そのためには多少の犠牲もやむを得ない。お前達には悪いが、耐えてくれ。」


申し訳なさそうにする土方。ここまで言われてしまっては、嫌だとも言えない。


「土方さんにそう言わちゃあ、断れねぇよな。新八や平助はどうする?」


「奴らにはこの件には関われないように、斎藤に頼んである。奴らの粛清を頼むぞ。」


「承知。」


「で、僕らは奴らに斬り込めばいいんですか?」


「そうだ。総司、お前は俺と山南さんについて来い。原田は外部に漏れないように見張りを頼む。」


「分かった。」


「決行は明日だ。心してかかってくれ。」


「!」



ーーーダーンッ!!



「!?」


突然立ち上がった沖田が、刀で廊下側の障子を真っ二つに切り裂いた。


そこにはお盆を手にした月が立っていた。


沖田はそれを確かめると、静かに納刀した。


「何をしている?」


土方の鋭い目つきが、月の止まっていた思考を戻してくれる。


「い、いえ。お茶をお持ちしたので…。どうぞ。」


月は皆の側に座って一人ずつお茶を出す。


「聞いていたんだろ?」


「はい。」


「お前には役目はねぇ。大人しく部屋に引っ込んでろ。」


「トシ!そんな言い方をするな。彼女のおかげで、今回の任務を果たせるのだ。」


珍しく土方を制する近藤。そして優しい眼差しを月に向けた。


「すまんな。汚い仕事だ。女の君にはきついものだ。今回はトシの命に従ってくれ。」


「……お酒を飲むんですよね?」


「え?ああ、そうだが。」


「なら、私にも参加させて下さい。」


「女は必要ねぇ!引っ込んでろ!」


「この件に私はもう関わっているんです!私も参加させて下さい!!」


「お前に何が出来るってんだ!?」


「毒を盛ります。」


「な、なに?」


月の言葉に驚きを隠せない土方。周りの者達も面をくらっていた。


「お、お前な……。」


「何も殺す程の毒ではありません。ただ、深く眠るだけです。」


月は懐から小さな小鬢を取り出し、皆の前に置いた。


「なんだ、これは?」


「私が作った睡眠薬です。これを飲めば、あっという間に深い眠りに落ちます。」


「つまり、これを使い深く眠らせれば、彼を苦しませずに楽に殺せると?」


「はい。…その方がお互いいいのではありませんか?」