あの月の目は本物だ。


いつか、似たようなことで喧嘩をした時も、月は同じような目で沖田を睨みつけていた。


だが、今の月の目は違う。


本当に今度こそ、足元をすくわれてしまうかもしれない。


「お、総司、斎藤。こんな所にいたのか?」


「なに?なにか用事?」


「土方さんが呼んでる。幹部は全員集合だとよ。」


いよいよその時が来たようだ。


沖田と斎藤は土方と近藤が待つ広間へと向かった。








月は部屋でたまっていた仕事を片付けていた。小姓とはいえど、いない間にどんなことがあったのかとか、把握しておかなければならない。


資料一つ一つに目を通す。


沖田は相変わらず子供達と遊んだりしているようだが、その裏腹に新撰組の中でも斬り合いの第一線で活躍しているようだ。


別の報告では、何か憂い晴らしでもしているかのように刀を振るい、人を斬っているとか。


殿内を斬ったよるに、二人で寄り添っていたことが、まるで嘘のようだ。


月は資料を片付けると、お茶を煎れるために部屋を出て行った。







お茶を人数分煎れたお盆を持って広間へと向かう。


「芹沢さんを斬るだって…?!」


「!」


物騒な話しが聞こえ、部屋の前で足を止める。


どうやら斬るだけの名目が出揃ったようだ。


「もう、斬るだけには充分過ぎる理由だ。これだけの悪評が広まっちまったら、新撰組の存続すら危うくなる。これ以上、あの人に好き勝手させるわけにはいかねぇ。」


「近藤さんも覚悟の上か?」


「ああ。」


もうこれ以上は芹沢暗殺を伸ばすわけにはいない。会津も芹沢の言動には困っている絶対に収拾をつけなければならない。


「決行については、計画してある。まず奴らを飲み屋に連れだし、充分に酔わせた後に、奴を殺す。」


「周りにいる奴らはどうするんだ。」


敵も味方も関係なく芹沢の世話を焼いている者達もいる。彼らもおそらく芹沢と一緒に来るはずだ。


「……残念だか、その場に居合わせた者は処刑することになっている。」


「じゃあ、関係のない者も殺すってことか?」


これにはさすがに動揺してしまう。するとそれまで黙っていた山南が口をだす。


「他の隊士達を守るためです。幹部達総出で芹沢さん達を暗殺したとなると、彼らは酷く動揺し、内部から瓦解しかねません。」