悔しくて辛くて、いろんな気持ちがぐちゃぐちゃになって、月の心を支配していく。


胸が痛くてたまらない。


熱い涙がポロポロと流れ落ちる。


「……なんで泣いてるの。」


「……。」


「ねぇ、なんで泣いてるの?」


月は強引に沖田の腕を引き、身体を密着させ自分の唇を押し付けた。


もうこうするしかない。


言葉でダメなら、行動で自分の気持ちを沖田にぶつけるしかない。


こうすることで、誤解が解けるとも、溝が埋まるとも思っていない。


沖田に無視されたり、酷い事を言われたりすると、哀しくて辛い。


関係が悪化していくと、なお辛くてたまらない。


やっと戻って来たのに、久しぶりに会えたのに、こんなのってない。


月は沖田を逃がさまいと、手でしっかりと沖田の着物を掴まえ、口づけを交わした。

息が止まる寸前に唇を離す。


「……これでもまだ、分かりませんか?私は誰とも床を共にしたりしてません。」


すがる思いで見つめる月に対して、沖田は何も言わない。


やはり、駄目なのだろうか…?


もう、沖田との関係は修復出来ないのだろうか……?


やっと覚悟を決めて、受け入れる覚悟をしたのに……。


「総司、こんな所にいたのか?」


後ろで斎藤の声がし、月は慌てて涙を拭い、その場を抜けるように、早足で斎藤の側を通って行った。


「なにかあったのか?」


「いや、世にも珍しいものを見ただけだよ。」


月が行った方向を見やる沖田。


「あんまり、彼女を苦しめるな。お前の言動は目に余るものがあるぞ。」


「はいはい…、一君にはお見通しってことか。なのに、なんで本人は気づかないんだろうね?」


「お前が下手な事を言うからだろ?子供じみたことをしているからこんなことになる。本当は分かってるんだろ?彼女が潔白だってことは?」


「そりゃあ、ずっとあの調子なんだもん。気づかない方がおかしいでしょ。それに、彼女は二股をかけられるほど、器用でもないしね。」


「そこまで言うのなら、素直に月に言ってやったらどうだ?その方が変化があるんじゃないか?」


「うーん、言葉だけならいくらでも言えるから、今まであまり言わなかったんだけどね。」


「あんまり悠長に構えていると、足元すくわれるぞ。月が誰かに取られても、今のお前では文句を言う資格はないぞ。」


「分かってるよ。」