「そうだぜ、お前ばかり良いとこ持って行きやがって~~~!!」
「お前らが駄目なだけだろ!」
そんなこんなでやり取りをしていると、沖田が原田達の後ろからやって来て、一瞬月と目が合うが、すぐに視線をそらして、何も言わずに横を通って行った。
月は言い合いをしている三人を残して、沖田の後を追いかけた。
沖田は中庭で佇んで、空を見上げていた。
なんだか、嫌な予感がし、さっきから心臓の鼓動が早くなっている。
出際にあんなことがあったし、やっぱり声をかけるのは気が退ける。
月は仕方なく踵を返し、来た道を戻ろうとすると、沖田が声をかけてきた。
「僕に何か用?」
振り返ると沖田がにこりと笑っていたが、その目は全然笑っていなかった。
「いえ、なんでもありません。」
沖田を直視出来ずに、視線を逸らして答えた。
「ふーん。」
「……。」
「ねぇ、一君は上手だった?」
「えっ?」
沖田は全身から不機嫌な空気を発しながらも、この上ないくらいの、意地悪な笑みを浮かべていた。
「口づけぐらいはした?それとも、添い寝とか?一君ああ見えて結構上手そうだから、それ以上までいってたり……。」
「そんなことしたりしません!!」
耐えられずに沖田の言葉を遮るように、月は叫んでいた。
沖田をこの上ないくらいに睨み返す。
「斎藤さんは沖田さんみたいに、あんな汚らわしいことはしません!!」
自分は潔白だとそう言いたかっただけなのかもしれない。
崩壊してしまいそうな関係を埋め合わせたかったのかもしれない。
辛い現実が重くのしかかり、沖田が向けてくる視線や一言一言が、月の胸の中に刻まれた傷口えぐる。
「女を金で買うことが汚らわしいの?なら町中が汚らわしい男で埋まっちゃうね。」
悪びれた様子もなく、けたけたと笑う沖田。ますます睨みをきかせる月を見て、卑しむような笑顔になる。
そしてそっと月に近寄り、耳元で囁くように言う。
「一君との子供が生まれたら、僕が夜中にこっそりと殺しておいてあげる。」
「!!」
「それとも、このまま僕に抱かれて、誰の子供か分からなくする?」
「ーーっ!!」
たまらずに沖田を突き放す。
こんなことを言うなんて、目の前にいるのは月が知っている沖田ではない。
ただ、遊ぶ女を求める男だ。

