斎藤に涙を見られないように顔を逸らした。


「そうか。だが、それはあんたの勘違いだ。」


「え…?」


「総司はあんたのことをフっちゃいない。むしろ、あんたが振り向くのを待っている。自らフった相手に、その相手を守るように他人に頼んだりしないからな。」


確かに沖田は自分で跳ね退けた相手を構うほど、器用な方ではなく、むしろ関係ないといったかんじだ。


そんな相手がわざわざ月を守るように言ったりはしないだろう。


「でも、私以外の女を囲うって……、今までそんなこと、したり言ったりしなかったのに……。」


「あんたが子供なだけだ。そんなものあんたに気にさせるために、総司が言ったわざと嘘に決まっているだろ。まあ、本当のところは本人に聞かないと分からんがな。」


「…………。」


「総司に何を言われたかは知らないが、あんたは囚われごとが多すぎる。そして、受け入れるのを怖がっているだけだ。それを振り払えば、その悩みも小さくなるだろう。」


「でも、自信がないです。今更、なんて言って沖田さんに近づけばいいのか、正直分からないんです…。」


「そうか、簡単なことだと思うが?」


「え……?」


「口づけでもしてやれ。そうすれば上手く行く。」


「えっ!く、口づけ……!」


その言葉に一気に赤くなり、口元を両手で押さえる。


「もう、していたのか。」


「ち、違います!あれは沖田さんが勝手に……!」


はっと気がついた時にはもう遅かった。罰が悪そうにする月。


「それが総司の気持ちだ。それを今度はあんたがしてやればいいだけだ。」


「…………。」


そうは言うが、女から男にするとはかなり勇気のいることだ。


こんな恥ずかしいことをケロッと言ってしまうとは、斎藤も沖田と同じ男なのだと、改めて自覚してしまう。


月が真っ赤になってまごついていると、斎藤が言った。


「ならば、俺が教えてやる。」


「え…?」


「いつまでもそのままでいるわけにはいかんだろ。お互いに少しは大人になったらどうだ?」


いつの間にか斎藤が目の前まで移動して来ていた。


教えてやると言ったが、まさか……。


「い、嫌です…!」


「そうやっていつまで逃げているつもりだ。そのうち本気で愛想尽かされるぞ。」


「……!」


「……分かったら、大人しく指示に従え。」


「はい…。」