なんで俺じゃあかんねん

「行こう、かな。」

今度が葵が口を開く。

「とりあえず、今日の後夜祭楽しもう?・・・一緒に。」

その言葉に、俺の中にある何かがえぐられたような気がした。

ズクン!と、確かに音を立てて。

やめろ。

「・・・まじで!?」

嬉しそうな先輩の声。

やめろや。・・・やめてくれ。

「うん!よろしくお願いします。」

照れたようなその言葉に、また・・・今度はチクチクと刺されるように。

葵が・・・他の男のものになる・・・。

まだ付き合うわけじゃないのに。ただ、後夜祭のダンスを一緒に踊るだけ。

それでも、あかん。

そんなことでも、無理。

なんか体が震えてる気がする。

頭がズキズキ痛む気がする。

実際はそんなことないのに、いや、もしかしたら今からそうなるんか?

とにかく、いろいろ崩れそうや。

だから、やめろ!

俺は視界を閉ざし、その場で息を殺した。


「・・・ハル?」