だけど。

「だけど、ケータイの画像は粗くてですね。最近は満足いかないんですよ」

「そうっ、そうですよね」

――言おうとしたことを彼が続け、なんだよくわかってるじゃないのと笑ってしまう。

だからあたしはデジカメを買ってしまったのだから。

彼とは、なんだか気が合う。

できればもう少し話をしたい。

「あの、」

と、改めて呼び掛けた時。

ウォン。

犬が吠えた。

苦笑しながら、彼がはいはいと首を振る。

「すみません、コイツ続き行きたいみたいで」

「あ、いえ、いいんですよ」

と言う以外に、どうしろと?

そして彼は、簡単に手を振り、会釈を交えて去っていた。

気付けば、空は紅蓮よりも紫に近くなっていた。

青から赤へ、赤から青へ、やがて暗く黒く。

私達のやり取りは、そんな風に幕を閉じた。