青年はあたしに、こう言った。

「夕焼けなんて、わりと珍しいものでもないのに、気付くと、その鮮やかさに魅了されてる。そんな感じですよね」

「ええ、たしかにそうですよね」

あたしは、一も二もSUNもなくうなずいた。

……だじゃれだ。

さておき。

「夕焼けにはたぶん、人を立ち止まらせる魔力があるんですよ」

「魔力……興味深い単語です」

「でしょう? あの赤い色はたぶん、人の心を異世界に送り込んでしまうんですよ」

「逢魔の時ってやつですね」

ははっ、と笑った彼の足元で、犬が右往左往。

あたしは訊いた。

「アナタも、写真撮られます?」

「私ですか? そうですねぇ……ケータイのカメラで、ぐらいでしょうか」

「ああ~」

とうなずいてしまう。

うん、私もこないだまでそのクチだった。