「遥花ちゃん、

・・・遥花、起きて」

「・・・ん?」

今、呼び捨てにしただろ

「ぐっすり寝てたね
外見てみ、超キレイだぜ」

なんだ着いた訳じゃないのか
着いてから起こせよ

「まぁ、見てみろって」

膝枕されてた私は肩をつかまれ
窓に体を寄せられた

「ね?キレイだろ?」

飛行機の小さな窓に二人で見るもんだから
距離が近すぎて、声が頭に響く

とっさに体がビクッと動いたのを
秋一は見逃さなくて

「あれ?耳弱いんだ?」

ヘラヘラした笑顔を向けてくる
どうやら、さっきの言い方は
わざとだったらしい

「ほんと、太陽がキレイですね」

「あーごまかした」

あきらめたのか
自分の席に戻った

「なぁ、遥花」

「・・・呼び捨てにしないで
いただけますか」

「なんで?いいじゃん同じ班だし」

そういって
なぜか腰に手を回してきた


「なにあいつ?
さっきからさぁ、なれなれしくない?」

「膝枕とかまじありえねぇ」

「何様って感じ」


ずっと聞こえてた
狭い機内だ。目立っても仕方ない

「・・・こういうことになるから」

腰に回された手を退けながら言うと

「ふーん、そういうの
気にしない人かと思った」

人一倍気にしてるんだよ
誰にも注目されたくない



「当機は着陸態勢に入ります。
シートベルトを着用ください」



長い長い
修学旅行が始まった